■9.自信喪失■
最近のノベルゲームは、まったくすごいですね。
「ずろうの棲処」もすごかったんですが、
「The noose」がまた凄い。
えらいコワいホラーノベルです。
文章から演出から音から何から、とにかくホラーしまくりです。
Nscripterで、こんなに怖い演出が出来るものなんですね。
私も、Nscripterでホラー書いたりしましたけど、こんなに怖いの、作れません。
すごく楽しめたんですけど、同じゲーム制作者としては
「完全に負けた……」と、打ちひしがれました。こんな文章、書けないよぉ。
ゆっくりと、ゆっくりと酷く緩慢に私は首を回していった。
(振り向いてはいけない)
骨が音を立てて軋む。全身を汗が伝う。人形の首を無理やり捻る情景を思い浮かべる。
(振り向いてはいけない)
視界が徐々に動いていく。眼球が小刻みに震える。閉じたいのか開いていたいのかわからない。瞼が小さく痙攣した。
(振り向いてはいけない)
理性が、恐怖を無理やり凌駕する。こんなにも怖いのに、それを無視して振り返る。
「The noose」からちょっと抜粋。
なにこの文章。えらい上手ですな。私だったら、
怖い、後ろに誰か(何か?)いる、誰、怖い――恐怖が、足から這いのぼる。動けない。動けない、のに。
ギィ……
自動人形のように、首が、ゆっくり後ろを振り返った。
……こんな感じになっちゃいます。主人公の恐怖を現すのに、端的に「怖い」「恐怖」とそのものズバリな言葉を書いてしまいます。眼球の震えとか、そういう細かい描写が出来ません。
平淡な文章しか書けない私には、こういう表現力は大変羨ましいです。
プレイしてみないと分からないんですが、演出も素敵なんですよ、このゲーム。
LiveMakerは動的な演出がすごいツールですが、Nscripterも負けてませんね。湿った恐怖がよく表現されています。
同じツールを使っていながら、私のゲームには、演出なんてありません。ただ画像が出てBGMが流れるだけです。それだけでも文字のみの小説に比べたら、ずいぶん映画的なんですけども。でもねー、こんな演出の凝った作品見ると、己の作品がいかに工夫のないものであったかが思い知らされます。
そのうえさらに私を打ちのめすのが、これがフリー作品だということです。
フリーでこのクオリティ……。
なんか、シェアを作ろうとしている自分が、情けなくなってくるですよ。
いや、自分で作ったオリジナル作品を売ろうが売るまいが、それは作者の自由ではあるんですけど。どんなヘボい作品でも、売ってはいけないなどとは誰にも強制出来ませんし。でもね……やっぱり、落ち込むのよ。
あ〜……。シェアに挑戦してみたかったけど、やっぱりフリーにしようかなぁ……。
でもねー。上には上がどこまでもあるんだから、こんな事言ってたら、いつまでたってもシェアは出せないよなぁ。他人との比較ではなく、己が自信をもって人様に出せる、そんな作品を作るべきなんでしょうね。
次へ→10.路線変更